冬
この世の何処かに“冬”なるものが存在するという。
この間この辺を旅行に来ていたジャパニーズが話しているのをオレは聞いたのだ。
「この国は暑いな。今ごろ日本は吹雪いて吹雪いて大変だっていうのに。同じ地球上とは思えんな。」
「そうかい、そいつはオレも見てみたいもんだ。何しろこの国は…。」
そうだ、この国には“冬”なるものなど存在しない。
あるのは“雨が沢山降る時期”と“まるで雨が降らないカンカン照りの時期”だけだ。
オレは生まれた時からずっとこの国だから、これが当たり前だと思っていた。
だが…
そのジャパニーズの話によると、“冬”という時期になると人も植物も凍ってしまう程寒くなるというのだ。
おまけに空からは“雨”とは違う水分がふわふわと落ちてきてそれはそれは美しい景色だそうな。
勿論この国も夜になると確かに冷える。
が、何もかも凍りついてしまう程寒くはならない。ましてや空から冷たく白いふわふわした物体など決して降ってなど来ない。
…それは、どの様な景色なのだろうか…?
見たい、見てみたい。
そう思うと、いてもたってもいられない衝動に駆られてしまった。
そしてついに、オレは仲間に別れを告げ、後ろ髪引かれる思いで故郷を後にし自分の夢の為死を覚悟で旅立つ決心をした。
勿論“そこ”まで辿り着ける保障などない。
夢を果たせず途中で野たれ死ぬ可能性だって、ある。
だが…
例え、そこに辿り着く前に寿命が来ても、
例え、そこに辿り着く前に人間どもに殺されても、
例え、景色をモザイクでしか捉えられなくても、
それでも、
オレは、行ってみたい…。
“冬”を探して、
何処までも…。
そう思い、オレは、
羽をいつもより高らかに羽ばたかせ、
複眼をきらきら輝かせ、夕日の沈む方へと旅立った…。
END
後書き
はい、思い切り突発です。というか、この作品は私のリベンジなのです。。。どういうことかというと、以前同じ題名で文章を書かされた事があるのですが、思い切りコケてしまって…(-_-;)。で、リベンジをかまそう、と前から目論んでいたのですが、今回やっとこうして形にできました。ちゃんとリベンジになってますでしょうか?
この作品は短編小説の基本の「実は…」というのを当てはめてみたのですが、どうでしょうか?初めから“彼”の正体が、分かりましたでしょうか?
で、この作品は、序章のようになっていますが、これで終わりです^^;続きはありません。
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