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第拾章、謎の男

 

翌日。

一秒一秒が途轍もなく長く感じられ、御門さん恋しさに身悶えしながら、そしていつもより早く帰れる筈の就学時間にイライラしながら半日を過ごした僕は学校から開放されるや否や韋駄天の如く彼女の家へと向かった。

 

「御門さん、ただいま!」

僕は合鍵で中に入り、彼女の姿を捜した。

すると突然僕は後ろから抱き付かれた。

「わ!吃驚した!」

そう言うと彼女はすぐに腕を放し、ニッコリと笑いながら僕の顔を覗き込んできた。

「お帰りなさい。どうだった?久し振りの学校は。」

「とっても淋しかったです。…会いたかった。」

僕はひしと彼女を抱き締めた。そして彼女の甘い香りと柔らかい抱き心地を十分に味わった。

「お腹すいたでしょ。お昼食べよ。」

「うん。」

 

それから僕達は昼食を食べてから話し合いの為鳴鏡館に向かった。

すると何と、明らかに挙動不審な男が鳴鏡館の周りをうろうろしていた。どうやら中を覗こうとしているらしい。

その男は色黒で…頭は丁髷を結っていて…何とも妙な格好をしていた。

「誰でしょう…。」

僕は呟いた。すると御門さんはその男にすたすたと近寄り、

「此処で何してるの?」

と詰め寄った。

するとその男は一瞬びくっとして逃げようとした。が、御門さんはその男の首根っこを摑み、

「こっち来なさい。」

そう言ってつかつかと鳴鏡館の中に連れて行った。

 

中には空蝉さんと風閂さんが既に来ていた。

「御門、どうしたんじゃ、その男。」

「この中を覗いてたの。もしかしたら間者かもしれないわ。」

「だとしたら、まぬけな間者だなあ。」

風閂さんが呆れた口調でそう呟いた。僕もそう思う。

「俺は間者なんかじゃねえ。」

ふいにその男が口を割った。

「じゃ、何なの?」

御門さんが脅すような迫力でその男にもう一度詰め寄った。と、その時、

「どうしたんですの?」

蛍火さんが姿を現した。すると、その男を見て蛍火さんは、

「あ!貴方…!」

と、普段あまり表情の変わらない彼女が珍しく驚きの顔になった。

「知ってるの?蛍火。」

「知ってるも何も、この男…捨陰党の男よ。」

「ええ!?」

皆一様に構えてしまい、更なる緊張感がこの道場に満ちた。

「お前、今更何をする積りだ?!お前達の総帥はもう居ないんだぜ。」

「大人しく観念しなさい。どんなに貴方が強くてもこれだけの人数相手じゃ勝てなくてよ。」

そう二人に言われるとその男は、

「バァカ、んな訳ねえだろ。もし刺客だったら、こんな真昼間なんかに来る訳ねえだろ。大体決戦はもう終わったんだぜ。それに元々俺はちょっとしたきっかけで捨陰の道場に修行してただけで…。決戦に参戦したのだって、俺ぁ唯手柄を立てたかっただけでぃ。」

「で、その手柄を立て損ねた仕返しをしに来たんですの?」

蛍火さんが腕を組みながら男に尋ねた。

「…フン!違うわい!」

「じゃあ、一体…?」

「そ…そんな事…どうでもいいだろ!」

と、男は憤然と顔を背けた。

「何か気になるなあ…。その首…刎ねちまおうかなあ…。」

風閂さんが冗談とは思えない程の殺気を込めてそう言った。

「わ…分かったよ。言うよ。言うから…。俺ぁ…今日は…その…ちょっと見に来たんだい…。」

「見に来たって…何を?」

その焦らすような答えに早く答えを知りたがっていらいらしている皆の気持ちを代表するかのような口調で御門さんが尋ねた。

するとその男は、蛍火さんを指差し、

「俺ぁ…その…この女があんまりいい女だったから、ちょっと…気になって…。ちょっと見に来ただけで…。捨陰にはこんないい女居ねえからな。鳴鏡はいいよな。羨ましいぜ。こんないい女の顔、毎日見れるんだもんな。」

そりゃ、確かに蛍火さんは美人だけど…これじゃ、ストーカーだ。

「じゃ、いっその事、此処の門下生になっちまえば?」

風閂さんがとんでもない提案をした。するとその男は、

「いいのか?」

と大はしゃぎ。でも約一名…

「ワタクシは嫌です!こんな得体の知れない男にうろうろされては困ります!」

蛍火さん、その張本人はあからさまな拒否反応を示した。

「そうねえ…。蛍火に変な事しないって約束できる?」

御門さんは賛成らしい。

「御門まで!」

蛍火さんの反対意見はまだ続く。

「ああ、約束する!これで毎日堂々とこの姉ちゃんの顔を拝めるって訳か。やりぃ。」

こちらの喜び様もあからさまだ。なんて軽い人なんだろう…。敵方の道場にあっさり入門してしまうなんて…。良く言えば柔軟性があるということなんだが…。

「ねえ、辰美クンはどう思う?」

ふいに御門さんに声を掛けられ、僕は自分の考えを慌てて巡らせた。

まさか僕に意見の提示が回ってくるとは。

「…ええと、やっぱりその…蛍火さんの意見も尊重した方が…。」

「ね、ね、そう思うでしょ?」

間髪入れずに蛍火さんに同意を求める様に詰め寄られた。

所がその時、

「まあ、まあ、いいじゃろ、蛍火。丁度門下生集めに苦心していた所なんじゃ。少しくらい我慢せんか。お前はワシと一緒に暮らせばこの男も悪さなどできんじゃろうて。」

空蝉さんがその重い口を開いた。

すると蛍火さんの顔がぱっと明るくなった。心成しか、その黄金に染めたの絹糸で織ってあるヴェールの様な髪も一段とその輝きを増した様にも見える。

「本当に、いいんですの?空蝉様。蛍火と一緒に暮らして下さるんですの?」

「うむ。荷物を持ってこい。ワシと一緒に暮らせ。」

「空蝉様!」

大木に蛍が飛び付いた…かの様に蛍火さんは空蝉さんに抱き付いた。

「これこれ、皆の前で…。」

空蝉さんも何だか嬉しそうだ。

「何だ?この女、空蝉の爺さんとデキてんのか?」

と、その男。妙な勘繰りだがこの場合致し方ないかもしれない。

「違うわよ!変な事言わないの!」

御門さんが凄い迫力で彼女を庇う。

「そういえば…お前、名前は?」

皆忘れていた、本当はどうでもよくはない事を思い出したかのように風閂さんが尋ねた。

「俺の名前は…ウタマルだ。皆には、そう呼ばれていた。」

「ウタマル…か。ま、よろしくな。」

風閂さんが手を差し出し、二人は握手を交わした…。

 

こうしてその日、墨流さんがいなくなった直後にまるで入れ替わるかの様に、鳴鏡館に新しい仲間が入って来た。

 

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