第拾壱章、恋の方程式 瞬く間に夜が来た。 夜ともなると、僕は帰らなくてはならない。明日も又学校があるからだ。 それに…あんまり此処から通い続けるのもまずいので僕は、たった独りの空間…誰も居ない…虚無の、暗闇の空間に又身を投じなければならない。 御門さんの温もりを知ってから僕は独り寝の淋しさを覚えた。 何故だろう…。以前は、彼女を知る前は…そりゃ、一人暮らしだったから淋しくなかったと言えば嘘になるけど…こんな空しく淋しく心がざらざらになるような…こんな、身を引き裂かれる様な気持ちは持たなかったのに…。 正直言って帰りたくない。でもそんな我儘を言えば御門さんを困らせる事になる。…辛い。 以前にも増して僕は淋しがり屋になった。 一足す一が一旦二になってしまうと二から一を引いても決して一には戻れない。 マイナスというおまけが…天文学的数字分に大きく付く…。恋の方程式だ。 一足す一は二…。僕達は、いや少なくとも僕はもう彼女なくしては生きられない男になっていた。 「じゃあ…僕…今日は…帰ります…。」 しょんぼりと僕はそう小さく呟いた。所が御門さんはそんな僕とは対照的にニッコリ笑って、 「うん。じゃあ、又明日ね。いい夢を。」 と言って明るく笑って手を振って見送ってくれた。 僕は大きく溜息を付いてとぼとぼと独り歩き出した。 部屋に帰るとそこは文字通り暗闇の世界だった。 パチッと電気を付けると部屋は明るくなったが僕の心は相変わらず暗いままだった。 御門さんの笑顔がまろび出てきて…僕は泣きたくなった。 何故あんなににこやかに別れられるのだろう。僕はこんなに辛い思いで一杯なのに。 …もしかしたら御門さんは僕が思ってる程には僕の事好きじゃないのかもしれない。僕はとんでもない馬鹿な自惚れ屋なのかも…。 僕は彼女が何を考えているのか分からなくなった。 そんな事を暗く考えながら疲れた体を布団へゴロッと横たえさせた。ふうと大きく溜息を付き、さあ眠ろうと瞳を瞑った。 が、その安眠を邪魔するかのように御門さんの全てが僕の頭を支配し始めてしまった。 ああ、御門さん…。 ごそごそと無意識の内に手がアソコに伸びる。 ああ、駄目だな、男は。 暇になると手が自然とそこに伸びてしまう。 そんな生き物に生まれた事を悲しくも嬉しく思いながら僕は御門さんの一糸纏わぬ姿を思い出した。 ファスナーを下げ、彼女を想って反り返っている今は淋しさに打ち震えている可哀想な自分の息子をよしよしと撫でた。 可哀想に…彼女が恋しいか。僕もだよ…。 そう言わんとばかりに撫で捲る。 正直言って今は自分の手では物足りない事この上なしだ。 御門さんの柔らかい身体が恋しい。僕の極上のマドンナのあの肢体が、恋しいよ…。 御門さん…。 実物が駄目ならせめて写真でもと、布団の下からずっと前に撮った数枚の彼女の写真を取り出し、キスをした。 この頃の御門さんも綺麗だったが、今はもっと綺麗だ。 ああ…。御門さん…。 僕はありったけの記憶を引っ張り出して僕の記憶の中の御門さんを愛した。 実物も記憶の中の彼女もどっちも僕の大好きな御門さんだ。 好きだよ…。僕の…イイ女…。 「あ…あ…御門さん…。」 僕は左半身を下にして、右手で息子を慰めながら想像の中の御門さんをもう一度自分のものにしようとしていた。 そして、その儀式のラストが見え隠れし始めた時…。 コンコン…。 誰かが遠慮がちにドアを叩いたのだ。 僕は焦って爆発寸前の息子を無理矢理ファスナーの奥に押し込んだ。 鍵を掛け忘れていたのでかなりの大慌てになった。 こんな夜に…一体誰なんだ? 勧誘にしては時間帯がおかしい。まさか…御門さん?まさかな。 だって僕の部屋に押し掛ける位ならあの時あんな平然と出来る訳ない。 「はい?どちら様ですか?」 「…辰美クン?」 …御門さん?! 「御門さん!!!」 信じられない程嬉しすぎる彼女の声を聞いて僕は光の速さでドアを開けた。 「…御免ね…。寝るとこなのに…来て…。」 「み、御門さん…もしかして何かあったんですか?」 急に心配になった。もしかして彼女は火急の用でどうしても来なくてはならなくなったかもしれない。 「…ううん。そんなんじゃないの。唯…今夜もう一度貴方の顔が見たくなったの…。ご、御免ね。迷惑よね。わ…私、もう帰るわ。御免ね。さよなら。」 そう言って歩き出そうとした彼女の腕をがしっと摑んだ。 「行かないで…。」 そう言うが早いか僕は彼女をぐいと引っ張ってドアを素早く閉め、今迄行き場を失っていた想いを込める様に有りっ丈の愛しさで彼女を抱き締めた。 「僕…僕は、貴女は僕と離れる事なんて平気なのかと思っていました…。だってあんなに平然と笑えるなんて…。僕…僕は、僕の方が少しだけ片思いなんですか…。僕は貴女と一秒も離れたくないって思っているのに…。貴女はそうじゃないんですか?僕は、淋しい…。」 「だって、だって、私が辛い顔したら貴方を余計辛くしてしまうと思ったから…。私は本当は泣きたかったの。帰らないでって縋って泣いて駄々をこねたかった。…でもやっぱり私…来てしまった…。御免ね…。」 そうか。御門さんは平気だったんじゃなく僕の事想って無理してくれていたんだ…。 やっぱり僕はまだ彼女より子供だ。 でも、僕は強くなりたい。いや、強くなるよ。そして…貴女を守る。 「ねえ…辰美クン…あれ、何…?」 ドアを背にしたままで僕と抱き合っていた彼女が一言そう言った。 「…え?アレって…?」 …! そうだ!写真! 僕は布団の下から出した写真を布団の端に置きっぱなしにしていた事実を思い出し慌てて隠そうとした。 が、既に写真は彼女の視線に曝され、その手に握られ…後の祭りだった。 「辰美クンの…えっち。」 その数枚の内何枚かを手にしつらつらと眺めた後彼女がそう呟いた。 僕は上手い言い訳を考えたが最早言い訳など通用する訳もなく気まずくなって後れ毛を掻いた。 「…でも、嬉しい。」 「えっ…?」 「コレ使ってえっちな事してたんでしょ。」 図星だ。僕は耳まで真っ赤になってしまった。そうだ、僕がついさっきまでしていた事をずばりと言い当てられてしどろもどろしてしまい恥ずかしさの絶頂になってしまった。 「辰美クンのそういう姿想像しちゃった…。えっち…。」 そう、潤んだ瞳で上目使いに僕を見上げた。 「そうですよっ。男は皆えっちなんです!」 こうなりゃもう自棄だ。僕は開き直った。 「可哀想に…。淋しかったのね…。私が慰めてあ・げ・る…。」 「え…?」 そう言うと御門さんは僕のズボンのファスナーに手を掛けゆっくりと下ろし始めた。 ぴく…。 慌てたのと吃驚したのとですっかり大人しくなってしまっていた僕の息子は又出番が来たと喜び勇む様にその大きさの変化をむくむくと彼女と僕に見せ付けた。 まだ手で撫でられている訳でも、舌で嬲られてる訳でもない癖に僕の息子は僅かなファスナーの動きだけでもう、これから始まるであろう出来事に予感して胸躍らせる様にドクドクとその鼓動を早めた。 ドク…ドク…。 そのスムーズな血液の流れが御門さんにもはっきり聞こえてきそうな位だ。 ファスナーを下まで完全に下げてしまうと御門さんは、その上のベルトとボタンを焦らすようにゆっくりと外した。 窮屈だったズボンに押し込められる様に隠されていた息子がようやっとその呪縛を解き放たれるかの様に解放された。 「辰美クン…。」 「み、御門さん…。」 今夜の御門さん、何だか妙にえっちだ。こういう御門さんも、イイ。 「素敵よ…。辰美クン…。」 ふふ、と小悪魔的な微笑みを浮かべ僕の耳元で囁いた。 …女は、魔物だ。 ぺろ…。 いきなり僕の息子の先端の溝に舌を這わせた。 「…!」 予感だけで潤いの液体を涌かせていた僕のソレは、いきなり敏感ポイントを攻められぴくぴくと喜びに打ち震え、僕は思わずよがり声を上げそうになった。 然し彼女に聞かれるのが恥ずかしいので我慢していた。 「もっと…力を抜いて。我慢しないで。感じたままに…イイ声出して。貴方の声…もっと聞きたい。好きよ…辰美クン…。」 そう溜息まじりに囁いた。 彼女の息の暖かさと同時に動かす舌の動き…。 「あ…。あ…。あ…。み…御門…さん…。」 「辰美クン…。」 僕の声を聞いて更に興奮したのか、彼女はアイスキャンディーを舐める様な仕草で僕の棒の根元を右手で優しくホールドしながら、僕のマッシュルームを優しくでも激しくぴちゃぴちゃと舐め回した。 「あ…!ああ…!ああ…ン…あ…!」 全身に汗が滲んで、胸の鼓動は早送り。 壁を後ろにし、足をM字に曲げたまま僕は下のシーツをぎゅっと握り締め必死で絶頂を迎えるのを耐えた。 「あ…あ…あ…。駄目…だめぇ…。御門さん…。ああン…。もう…。」 座っても居られなくなり、僕は崩れる様に布団に横たわった。この姿勢は無駄な力を入れなくていい分余計快楽に流されてしまい易いのだが。 「辰美クンの○○○○…好きよ…。」 そんな卑猥な事を言って僕の息子を完全に根元まで彼女の口の奥まで迎え入れてしまった。 かぽ…ちゅる…。 僕の先端の傘が彼女の喉奥まで入ってるのが分かる…。 僕の根元の方は彼女の唇が唾液で光りながら僅かに蠢いていた。 「あ…ああん…あ…。ああ、本当のアイスキャンディーみたいに貴女の口の中で溶けそうだよ…。ああ、僕のお○○○○…なくなっちゃうよ…。駄目だよ…。御門さん…。ああ…ん…。」 「いいのよ。溶けちゃって…。私のお腹に入れたいの。貴方の○○○○…。だってこんなに可愛いんですもの…。ふふ…。」 ちゅぱちゅぱと魅惑の上下運動を繰り返しながら器用にもそう囁いた。 「あ…あ…御門さん…。」 「ねえ…辰美クン…ズボンも…脱がしていい?」 そう言うが早いか彼女は素早い仕草であっという間に僕のズボンと下着を脱がし僕の下半身を全くの裸にしてしまった。 もう、僕の身につけてるもの、快感の汗で部分的にぐっしょりとなっている薄いTシャツだけ。 すっ…すっ、と彼女の手が僕の内股を撫でた。すると彼女の心地良くも柔らかい赤ん坊の様な手の感触に足がぴくぴくと痙攣してしまった。 「ああん…。」 「辰美クンの足って、男の人とは思えない位綺麗なのよね…。とてもすべすべしてて…でも、逞しくて…色っぽい…。」 そ…そうなのかな…。僕には分からない。 汗ばんだ僕の素肌を吸い付くように掌が踊っていく…。 彼女の口では僕の肉棒が悦び踊っている…。 ぐちゅ…ぐちゅ…。 傘だけを嘗め回す音。 「ああ…ああ…ああ…ン!もっと…もっと…!」 僕の泣き声にも似たおねだり。 ちゅ…ちゅちゅ…。 硬い棒の部分と柔らかい傘の部分の間の境界線への愛撫…男の弱い部分の一つだ。ソコを舐められると僕は…狂っちゃうんだ…。 ちゅる…。 一周、二周…。愛撫は時計回りそして逆回りに怒涛の様に繰り返された。 今宵、僕たち…二人で踊り、二人で喘ぎ…そんな狂乱の快楽…貴女とこのまま…。 永久に快楽追い求め…、終わりもなく、絶望もなく…そんな楽園の幻想…ずっと続けばいい…。でも… 終わりは、突然に。 「あ…!あ…!あ…!」 彼女の、僕のペ○スへの餓鬼の様な凄まじい食欲に押され、ゴールをふいに迎えてしまった…。 ドクッ…!ドクンドクン…! 「はあ…。」 腰が自然と波打つ。二度、三度、四度…僕は彼女の喉奥に何度も男の欲望の権化を撃ち込んだ…そして何度目かの波の後ようやっと射撃を終えた気だるさに包まれふうと溜息を付いた。 僕は御門さんはすぐに口を離すか、射精が終えたら口の中の夥しい量のものを急いで吐き出すだろうと、はっきりしない頭でぼんやりと考えていた。が… ゴク…。 そうはっきり聞こえる程の音を立て僕のモノを全部飲み込んでしまった…! 「!!!」 その予想だにしなかった出来事に言葉さえ失くし頭を急いで上げて目を白黒させながら彼女の方に視線を送った。 すると御門さんはえっちに舌なめずりしながらこう言った。 「…美味しい。」 「そ…そんな…。き、汚いですよ…。」 「そんな事、ない!」 彼女はきっぱりと言った。 「貴方の…細胞だもの。私は…大好き。貴方の…可愛くて素敵なこの子から…のだもの…。汚くなんか…ない。」 その真っ直ぐな、嘘偽りのない、愛の深さが測れそうな彼女の眼差し、その瞳に浮かんだ色。僕の心を射抜いた。 「それとも…嫌だった?だったら…御免ね。」 「そ…そんな、嫌だなんて…。唯、吃驚して…。」 僕は思い切り照れ捲ったが、実は腰の辺りが充実していた。 愛する女性にそういう事をされて幸せに思わない男はいない。 「一緒にいて下さい御門さん…、朝まで…。朝になったら…僕は…僕は行かなきゃならないけど…。」 「でも…。」 「お願いします。お願い…します…。」 僕は御門さんの手をぎゅっと握り締めた。…帰したくない。 「じゃあ、明日貴方が行ってから…帰るわ。そうすれば学校関係者には見られない。」 僕達は僕のシングルの布団にごそごそと潜り込んだ。 二人で寝るには少々狭いが、僕達はくっついて寝るので問題ない。 僕は彼女を布団の中でぎゅっと抱き締めた。 ずっとこうしていたい。何処にも行かせたくない。離したくない。 「辰美クン…私の事…捨てないでね。」 「な…何を言い出すんですか。そんな事ある訳ないじゃないですか。」 「うん…。でも不安になるの…。貴方と会えない時貴方が何を考えているのか分からなくて不安になるの…。私の手の届かない空間に私の知らない貴方がいる…。そう思うと淋しくなるの。…誰かに取られてしまうんじゃないか…って。貴方の心が知らない間に私から離れてしまうんじゃないかって。私…我儘な女ね。四六時中私の事だけ考えて欲しいって思うの。私以外の女の人と話もして欲しくないの。貴方は…とても格好よすぎるから余計不安になるの。」 「僕が格好いい?そんな事ないですよ。」 「…自覚ないのね。そんなにハンサムなのに。そのハンサムな顔…もう誰にも見せたくない。…好きよ。大好き。ハンサムで、可愛くて、凄く真面目な貴方が…好き。…恐いの…。私を捨てないで…。私だけを見て…。」 そう言って彼女は僕にしがみ付いてきた。その身体が震えている。 「僕の…心も身体ももう…貴女だけのものですよ。僕は…いつも貴女の事を考えています。昨日なんか、教室で鼻血が出て…。えっちな貴女をつい思い出してしまって…。ベッドの中で、僕の身体の下で美しく跳ねる貴女を…。気が付くと机の上にぽたぽたと赤い跡を付けていたんです。僕は…僕の心はもう…貴女のものなんです。僕の方こそ、貴女と一緒に居られない時は身を裂かれる様な思いをしているんです。神社に御門さん目当ての、参拝客を振りをした軟派野郎がよく出没しますから…。でも、無茶しないで身体には本当に気を付けて下さいね。もう、一人の身体じゃないんですから。」 僕は彼女のお腹を優しく撫でた。 「辰美クン、子供…大事にしようね。」 「うん。僕と御門さんの大切な子だから…。」 「そうね。でもそれだけじゃない。」 「えっ…?」 「鳴鏡と捨陰は長い間戦ってきたじゃない?でも、お腹の子は捨陰党総帥の孫で、鳴鏡の巫女の子…。もう、鳴鏡も捨陰もない、そういう時代がやって来る…。この子は鳴鏡と捨陰の平和の象徴なのよ…。」 平和の象徴…。僕はそんな事考えた事もなかった。 御門さんは本当に頭のいい人だ。 もしかして鳴鏡と捨陰の戦いを一番憂えていたのはこの人だったのかもしれない。 もしかしたら、捨陰党総帥の息子の僕が鳴鏡に来たのも、そしてこの人と結ばれたのも運命だったのかもしれない。そんな気がしてきた。 …そうだ、僕は表向きは鳴鏡の人間だが、血筋は捨陰党の人間なんだ…。 でもそれは僕と僕の妻である御門さんと、僕の生い立ちを知る空蝉さんとの三人だけの秘密だ…。 「ねえ、御門さん。」 「ん?」 「秘密を持つのって、辛いね。」 「…そうね。」 「…僕、眠れなくなっちゃった。子守唄…歌ってよ。」 「え?…うん。分かった。」 御門さんはそう快く承知してくれ優しく甘く子守唄を歌い出した。 僕はその歌声に酷く驚いてしまった…。 彼女の歌声は…微かだけど柔らかく優しく、透明で張りがあって、すぐに僕の心を虜にしてしまった…。 何て心地いいんだろう…。僕は、彼女の歌声に、母の胎の様な心地よささえ感じ、うっとりと聞き入って我を忘れてしまった。 そして、僕は彼女の歌声にはまり欲張りになってしまった…。 「ねえ、御門さん。」 「…あ、ごめん。下手だったわね。」 「とんでもない!僕…思わず聞き入って…。子守唄もいいけど、他にも歌ってよ。」 「え?いいけど…。どうして?」 「僕…御門さんのファンなんです。アンコール。」 そう言うと、彼女はくすっと笑って、 「…分かった。」 そう言って今度は流行の歌を歌い出した。 …やっぱり、この人は凄い。プロ級に上手い。いや、それ以上だ。 彼女の歌ってくれた歌は悲しい歌だったのだが何と不思議な事に僕の目から涙が滲んできてしまった。 …あれ…?何でだろ…?止まらないぞ。 御門さんは、そんな僕に気付いて、 「!どうしたの?辰美クン!」 と心配して大慌てした。 「何でもないんだ。…何でだろ。貴女の歌聴いてる内に悲しくなってきて…。感動しちゃった。」 僕は鼻をぐすんとやった。 信じられないけど、この人の歌声には力がある。凡人では到底得られない、単に上手いとか歌えるといったレベルでない何かが。 それから僕は他にも色々催促して歌ってもらったが僕はその全てに感動して聞き入ってしまった。 今迄知らなかった彼女の素敵な一面を又一つ知って益々彼女にホの字になってしまった…。 好きです。御門さん…。 それから僕は最後に又子守唄をリクエストして、優しい歌声に包まれながら世界も羨む幸せな眠りに付いた…。 翌朝、彼女は僕の為にお弁当を作ってくれた。僕はいつも学食だったから、感動だ。これは…もしかしてもしかすると愛妻弁当ってヤツ? 「でも…御門さん、今日はお弁当いらないよ。」 「えっ?本当…?私ってバカね。」 「すみません…。」 彼女はかなり落ち込んでる様子で、はあと溜息を付いた。 「あ、でもこれ今日学校が終わったら食べるよ。一緒に食べようよ。」 彼女を笑顔にしてあげたいからそう言った。僕も早く食べたいのだが。 「うん…。ありがと。辰美クン…大好き。」 「僕もだよ。」 そして僕は制服を着て、玄関先でキスをした。 「行って来ます。」 「うん。…あ、ちょっと待って。渡すの忘れてた。」 「何?」 御門さんは自分のバッグをごそごそ探って何かを取り出した。 「はい。」 その手の中にあったのは…マスコットだった。 「可愛い。これ、僕に?」 「うん。貴方の得意なあの二本の刀のマスコット。辰美クンにあげる。私の代わりにいつも持っててほしいな。…だめ?」 「ううん。嬉しい。ありがとう。御門さん。」 それは、割と大きく、掌サイズ位の大きさでフエルト…だろうか、中に多分綿が詰まってるんだろう。そんなマスコットだった。 「ありがとう。大事にします。」 嬉しい…。僕は生まれて初めて好きな女性からプレゼントを貰って幸せで幸せでうきうき気分だ。 …一生大事にしよう。僕は、そう、思った。 |
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