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第四章、御門の独白

 

 

「辰美クン!待って!」

 私は、声の限り叫んだけれど、彼の耳には届かなかった…。

私の愛しい人、私の惚れたたった一人の人は、あっという間に私の目の前から居なくなってしまった。“さようなら”という言葉を残して。

 私は、ショックで立ち尽くした。彼の後を追い掛けたかったけれど、それも出来なかった。私達は、お互いにお互いの気持ちを確かめる事なくずるずると肉体関係を続けていたからだ。

 あの夜…あの嵐の夜以来、私達は何度も逢瀬を繰り返し、お互いにお互いの身体を慰め合った…。

 …彼は、私に対して特別な感情など持っていない。彼は唯、私を可哀想に思って、同情から私の側に居てくれたのだ。

そして、夜の密室という特別な状況下から、男の本能を呼び覚ます結果になってしまっただけ、なのだ。

…彼が、そう言っていたから。

 そう…私は彼の心が誰のものか分からないのだ。それを確かめたかったけれど、私には出来なかった。彼の気持ちを聞くのが恐くて。それを知ってしまえば、私はもう彼の側に居させて貰えなくなるかもしれなかったからだ。 

私以外の女性の名前…彼の口からその名前を聞くのが恐くて、何も出来ずにいた。

 でも、私…私は、それでもよかった。例え、彼が自分の身体を慰める為に私の身体を利用していただけだったとしても、私はそれで彼の側に居られるなら、幸せだった。

 確かに、私は彼の心も欲しかったけど、そんなものまで求めるのは私には出過ぎた事だ。私は…唯彼が私の身体を使って楽しんで貰えただけでも光栄だった。

…私は、まるでSEX人形の様な扱いでもいいから…彼の側に居たかった。一緒に居させて貰えば、それだけで十分だった。

彼が…本当に好きだから。

 だから、私は彼に女の一番大切なもの…処女を、あげた。結婚に因らなかったけれど、私は、本気で惚れた男に処女を貰ってもらえて、幸せだった。だから私は処女を失くした事を少しも後悔なんかしていない。

 よく、両思いの癖に意固地になって彼女を抱こうとしないバカな勘違い男が居るけど、私はそれは大きな間違いだと思う。

結婚していようがいまいが、自分が本当に好きな男に処女を捧げられる事こそが女の幸せだと思うから。 

私はその幸せを辰美クンに貰った。

…処女を失くした事で例え結婚出来なくなっても、辰美クン以外の男と結婚する位なら一生独身で居た方がましだ。

 …辰美クンは、やっぱり私の見込んだ通りそんなバカ男じゃなかった。ちゃんと私の意志を尊重してくれた。私に恥かかせない様にしてくれた。彼こそ、男の中の男だ。

…やっぱり私はもう辰美クン以外の男は愛せない。

 私は今迄こんなに誰かを好きになった事などなかった。

六つも年下だけど、私はそんな年の差など感じた事などなかった。私にとって彼は、年下の可愛い後輩ではなく、とても頼りになる頼もしい逞しい一人の男なのだ。

私の心は、もう完全に彼だけのものになった。

 なのに…なのに…彼は、私を捨てた。私を嫌いになった。私の所にはもう来ないと言った。

私の身体にもう飽きたのだ…。

彼が私と一緒に居てくれた唯一の条件…私の身体…。

その身体がもう役に立たないなんて…。もう、彼に愛される事がないなんて…。

彼の目には私はもう魅力的には映っていないのだ…。

私は…飽きられた…。まるで壊れた玩具の様に、私は、捨てられた…。

彼はもう二度と、来ない。もう二度と、私に笑顔を向けてくれる事などない…。

 

そう思うと、私はふらふらとバスルームに来て、無意識に剃刀を手にしていた。

 「辰美…クン…。」

 私は、彼の全てを思い浮かべた。

彼の笑顔、涙、逞しい身体、男らしいセクシーな唇…すらりと伸びた長い足、私を抱き締めてくれた腕の力、私を抱いてくれた時の汗ばんだ肌、私の耳元で囁いてくれた、あの、優しい、男らしい、色っぽい声…。

私はその全てを思い浮かべた…。

忘れない様に。死んだ後も、忘れない様に。

私は彼の思い出の全てをあの世に持っていきたい。

 「…好き。辰美クン…。大好き…。」

 私の目から涙が毀れた。

…どうしてこんなに泣き虫になったんだろう?私。

辰美クンの事になると私は泣き虫になる。…涙が、勝手に一人歩きしてしまう。

 …私は、大好きな辰美クンの事で頭を一杯にして、剃刀の刃先を自分の左手首に当てた…。

 「愛してる…辰美クン…ずっと…。」

と、その時突然私は強烈な吐き気に襲われた。

 「やだ…何これ?気持ち悪い…!」

 思わず剃刀を横に置いて、洗面所の所で戻してしまった。…すると、少し楽になった。

 「何なの?一体…?夏バテかしら?」

 あり得る可能性が頭に浮かんではっとしてしまった。

 「まさか…!」

 私は慌てて計算してみた。

 …明らかに、遅れてる。

 「まさか…。でも一週間遅れる事なんてよくあるし…でも…。」

 

でも、私は、身に覚えがあったから、眠れない夜を過ごして翌日一人で病院に行って、診察を受けた。…すると、結果は“陽”だった。

 …私は、辰美クンの子を身籠ってしまった…!!!

 

それから、そのショックで倒れそうになりながらふらふらと家に帰った。暑さと、悪阻と、ショックで、かなり参ってしまっていた。

 …でも、考えなければならなかった。

 …私は彼の迷惑そうな顔が目に浮かんだ。

 迷惑そうに、困りますという言う辰美クンを。私ははっきり言ってそんな彼を見たくなかった。

 …でも、私は堕ろしたくなかった…。自分一人でも産んで育てたいと思い始めていた。

…彼は、同情で私を抱いてくれただけ。…彼は、悪くない。私があの夜、彼に甘えたから…。側に居てと頼んだから。だから、責任を取らせるなんて、出来ない。彼はまだ高校生で、これからの人だから。

だから、私一人でもいいから、産みたい…。彼の子を。私の、本当に本気で惚れた人の子だから、産みたい。

私は、辰美クンが好きだから、彼の子も大好き…。

 私は…辰美クンの遺伝子を受け継いでいる、私のお腹にいる子を愛し始めていた。

そして…一人でも、産む決心をした。

 …でも、恐い。彼にこの事を告げるのが。愛してもいない女の子供なんか歓迎できる訳ないから。

彼は、きっと言い難そうに遠回しに“堕ろして下さい”と言うだろう。

でも彼に迷惑掛けない様にひっそりと産んで育てたい。そう、思った。

 でも、私は彼の嫌そうな迷惑そうな困り果てた顔を見に行かなくてはならない。…嫌だ。

でも、黙ってても、いずれ分かる事だし。

…でも、やっぱり恐い。

 私は、言わなければならないのに、言う勇気が中々持てなくて悩んで疲れ果ててしまった…。

 

ふらふらとよろめきながら疲れ切った身体で寝室まで歩いて行き、倒れ込む様にドサッとベッドに横になった。目を瞑ると、辰美クンの魅力的で可愛らしくでも男らしい笑顔が目の前に浮かんだ。

 「辰美クン…。」

 私は知らず知らずの内に目に涙を滲ませていた。

そして彼への想いが胸一杯に込み上げてきてその想いが涙となって枕を濡らした。

 …私は、弱い女だ。一人でもいいなんて、本当はとんでもない強がりだから。

 本当は辰美クンの側にずっと居たい。彼を、誰にも渡したくない。ずっと一緒に居て欲しい。私だけのものになって欲しい。結婚…して欲しい。私だけを愛して欲しい。

そんな、我儘を心に持ってる。

 だけど、そんな事無理強い出来ない。だってこうなってしまったのは私の責任だから。彼に責任取れなんて無理に迫って彼を追い詰めたくない。彼を困らせたくない。そんな事して嫌われたくない。

私はこの想いを自分の胸の中だけに仕舞っておかなくてはならない。

彼を…追い詰めない為に。

 ああ…!でも私の本当の心は…彼を束縛したい気持ちで一杯なのに…!言ってはいけない。彼の為に…!

 そう思えば思う程、彼への想いが募ってきて、枕がびしょ濡れになるまで独りで嗚咽してしまった…。

 

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