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第六章、辰美の決心

 

あれから僕は唯呆然と日々を過ごすばかりで何も出来なくなっていた。

夏休みだから学校に行かなくてもいいのがせめてもの救いだ。

僕の母さんは五年前に莫大な生命保険を残して他界した。その後一時期親戚の家で暮らしたりしていたが今は一人暮らしだった。

 

その一人暮らしの僕の部屋のチャイムを鳴らす人がいた。ドアを開けると何と御門さんが立っていた。

 「御免ね。でも…どうしても言わないといけない事があるから。電話を掛けると逃げられそうだったから、直接…来て…御免なさい…。」

 「…駄目ですよ。…御門さん。」

 僕は御門さんから目を逸らせた。

 「でも、少しだけ…。どうしても、必要なの…。お願い…。」

 そう、切羽詰った様子で言われ僕は、気が進まないがその雰囲気に押され、少しだけならと彼女を部屋に上がらせた。

 「辰美クン、凄い勉強熱心なのね。」

 御門さんはぐるっと部屋を見回した。僕は勉強は嫌いではないから、結構やっていたのだ。

最も剣の方が面白くなってしまってからはお留守だけれど。

「そんな事ないですよ。…最近は特に…何もする気になれないんです。」

「…そう…。私もそうなの…。神社での仕事も、鳴鏡館の事も、まだしないといけない事が山積みなのに…。私…私ね…実は…。驚かないで…聞いてくれる?…私、勇気を振り絞って…此処まで来たの。貴方に…又逃げられるかもって思ってても、どうしても来なきゃならなかった。私…私…ね…今…一人の身体じゃないの。…貴方の子が…此処に…居るの…。」

「!!!」

僕は、気が遠くなった…。

 

気が付くと、夕方になっていた。膝枕が気持ちいい。鈴虫だろうか、リンリンと鳴いていて、夏の終わりを告げていた。

御門さんは僕の髪を優しく撫でてくれていた。とても居心地がいい。

「辰美クン…御免ね。あの時、あの夜、私が貴方に甘えなければ、貴方に側に居てって言わなければ…貴方に迷惑掛ける事なかったのに…。辰美クン…。貴方はまだ高校生だものね。嫌でしょうね。私が産んだら…。それは分かってるの。辛い事言われるの覚悟して、逃げられるのを覚悟で、此処に来たの。」

御門さんの声が涙ぐんだ。

「でも、でもね。私…産みたいの。貴方の子…。迷惑掛けない積りだから、責任取れなんて言わないから…。貴方が唯…成り行きで私とああいう事になってしまったのは分かっているわ…。貴方が私の事を何とも思ってなくて唯優しさと同情から私を抱いてくれたのだとしても私は…。私は…貴方に愛された思い出があれば生きていける…。だから、私は産みたいの…。」

「そんな…。御門さんは…恐怖から逃れる為に…僕に、偶々そこに居た僕に抱かれただけなんでしょ。…誰でも、よかったんでしょ…。何で、そんなヤツの子を…。」

僕は、起き上がって御門さんから目を逸らしながら、言った。

「辰美クン、私…そんな馬鹿な女じゃない!好きでもない男に抱かれる位なら、幽霊に取り殺された方がましよ!唯、私…貴方だったから…。貴方だったから、家に入れて泊まっていけばって言ったのよ。だって…あの嵐でしょ。きっと、まともに帰れなかったし…。最初は本当にそれだけだったの。でも…恐い夢を見て、目が覚めたら…貴方がいて…一緒に居て欲しかったの…。貴方だったから。例え処女を失う事になってもそれでもいいって思ったの…。でも…嬉しかった…。貴方に、私の…処女…捧げられて…私、幸せだった。でも、貴方の心が分からなかったから、私は逆に貴方を汚してしまった様な罪悪感があったの。まだ高校生の貴方に甘えて…そういう状況にしてしまった。まるで、私が貴方を利用する様な…。御免ね。私の心が弱かったばっかりに。いけないと思いながらつい…貴方…貴方の事…引き止めてしまった。貴方が…好きだから…。好きだったの…辰美クン…。私は…貴方の事子供だなんて思った事一度もないわ。貴方は素敵よ。辰美クン…好き…好きなの…。私…身体だけじゃなくて貴方の心も欲しかった…。例え貴方が私の事…欲望の捌け口にしていたのだとしても、それでも私は貴方の側に居られたから、それだけで…嬉しかった。例え、貴方が他の誰を想って私を抱いたんだとしても、それでも…。好きなの…、辰美クン、もうどうしようもない位。だから、辰美クンの子だから、産みたいの…。あの日…貴方が私にさよならを告げた日、私は死にたくなった…。でも…お腹に貴方の子が居るのが分かって、もう一度生きようと思ったの。大好きな貴方との、大好きな子…。立派に育てたい。唯、それだけを言いに来たの…。好き…好きなの…。…何でこんなに涙が出るのかしら…。私…こんな泣き虫じゃなかったのに。みっともないわね…御免ね…。」

御門さんの瞳から、ぽろぽろと大粒の真珠色の涙が零れた。

僕は思わず彼女を抱き寄せた。

こんなに…こんなに一途に僕の事思ってくれていたのに、僕は…僕は…彼女の事を何という目で見ていたのだろう。

「僕は卑怯な男です。貴女に、先に言わせてしまった。確かにあの夜の出来事は成り行きだったのかもしれません。でも、僕は貴女だったから、成り行きに身を任せたくなったんです…。僕の本能は貴女にしか働かないから…。僕も貴女同様、惚れた女しか抱きたくありません。僕は、僕は、ずっと辛かったんです。好きな女性と肉体関係を持てた事を喜びつつも、空しかった。貴女が、僕ではなく別の男を想って僕に抱かれているものだとずっと思っていたから…。貴女…貴女には既に親しい男性がいる様に見えたんです。僕は、その男の代わりなのかと思うと彼等に激しい嫉妬とそして憎悪すら覚えたんです。」

「辰美クン…。何で私にそんな人がいるなんて誤解したの?彼等って誰の事?」

「あの夜、僕に貸してくれた浴衣の主と、墨流さんですよ。」

「ああ…あの浴衣はね…父の形見なの。形見っていってもまだ生きているんだけど…もう二度と会えないから、やっぱ形見かな。」

御門さんの声がくぐもる。訊いてはいけない事を訊いてしまったと後悔した。

…でも、そんな大事な物を僕に貸してくれたんだ…。

「墨流の事は私、何とも思ってない。そんな風に考えた事もなかった。彼だって唯私に恩を感じているだけよ。だってそうでしょ。右も左も分からない、言葉も通じない外国で親切にされたら誰だって恩を感じるわ。心細かったのよ。きっと。それに…辰美クン…黒蓮さんの事、覚えてる?」

「ええ。まあ…。」

「彼も外国人だったでしょ。私…墨流を見た時何だか彼の事思い出してしまって…。それで、黒蓮さんのあの技の名前を付けたの。」

「御門さん…まさか、黒蓮さんの事…?」

「ばか。」

僕は人差し指で額を小突かれた。

「すみません…。僕ってやきもち焼きですね。」

「そうね。」

「それに、臆病な男でした。貴女に想いを打ち明ける勇気を持てなかったばかりに、色々辛い思いをさせてしまった。僕は…僕は…貴女が僕を拒絶するのが恐くて、自分の気持ちを伝える事が出来なかった。貴女の…僕の事なんか何とも思ってないっていう、その一言を聞くのが恐かったんです。僕は臆病な男だったんです。でも…それは貴女の前だから…。男は恋をすると酷く臆病になる生き物なんです。僕は貴女が唯身体の淋しさを埋める為に僕を利用しているものと思っていたから、辛くなって…貴女から離れたんです…。貴女が他の男の人と話をするだけでも、僕はいつも強烈な嫉妬を感じていたんです。貴女を…誰にも渡したくなかったから。貴女が好きだったから。でも、貴女は僕なんかよりずっと大人で…僕なんか、六つも年下の僕なんかどうせ相手にして貰えないだろうと思っていたんです。僕は、貴女が好きです。貴女…だけなんです。…でも、子供の事は…もう少し考えさせて下さい。…すみません…。」

 

そして、僕は御門さんに帰って貰った。そして一人になってこれからの事を考えた。

さて、どうする?

子供が出来たと聞いて最初は驚いたが、よく考えてみれば至極当然の事だ。

僕達は、避妊をしなかった。いや、できる様な状況ではなかった。

そういう物を御門さんが持ってる訳ないし(持っていたら、変だ)僕も、そんな積りで行ったんじゃないし、そんな物買った事さえなかった。

御門さんは、どうしても産みたいと言っていた。彼女の意志は固い。彼女一人に責任を押し付けて、僕はのうのうと生きるのか…。最低だ。なら、諦めるのか…?御門さんと僕の、愛の結晶…僕達の子…を。

僕は、ふと父さんの事を思い出した。僕が自らの手で斬った父さんの事を…。

もし僕が自分の子を殺してしまったら、僕は…僕は本当に最低な人間になる。僕は、親ばかりか自分の子供まで殺してしまう事になる。嫌だ。

だが、もし学校にバレたら…?退学間違いなしだ。

でも、でも、僕は御門さんを愛してる。心から。もう、御門さんの居ない人生なんて考えられない。

僕は、あの時、父を斬った日、御門さんの温もりを知らなければ、もしかしたら…僕は…僕は…後を追っていたかもしれない。

御門さんの慰めがなかったら、僕は自分の罪の重さに耐え切れず駄目になっていたかもしれない。

僕の心の闇を晴らし、僕の心に刺さった棘を抜いてくれたのは誰でもない、御門さんなのだ。

今御門さんのお腹に宿っているのは紛れもないその御門さんと、そして彼女をこの世の誰よりも愛しているこの僕の子なのだ…。

学校が何と言おうが、それが何だ。皆には迷惑を掛けると思うけどきっと分かってくれるだろう。

僕は…御門さんの心も身体も傷付けたくない。

確かに僕はまだ未成年で皆から見ればまだ子供かもしれないけど、僕は、男だから、僕が御門さんを守るんだ。

そして、僕達の子を、次の世代の鳴鏡館を担う立派な剣士に育てるんだ。そして僕もその子に自慢される様な立派な剣士になるんだ。

そう…勇敢に戦った父さんの様に…。

その父さんと僕達の子の、生命の交代劇を必ず見届けるんだ…。

 

僕の心は決まった。

 

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