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そんな私の痴漢事情

case1;大した度胸

 

私はA市にあるS女子大の3回生である。

私の自宅から大学までは片道なんと2時間近く掛かる遠距離であり、そこへ辿り着くためには地元のN電車、地下鉄、H電車を乗り継がなくてはならない。

流石は日本で二番目に忙しい街である。

その、通学途中の電車という電車は毎日人がごった返し、足を踏む場もないほどの大盛況振りである。

故にそこには“それ”がよく出没するのだ。

特に途中の地下鉄の、N駅からU駅までは、中心部ということもあり、痴漢がよく出没することで有名な区間である。

私は大学に通うまで痴漢というものに遭遇したことがなかった。

高校は電車通学をしていたが、方向が都心の方ではなく山の方へ向いていたせいか、朝も夕も人がごったがえすことはなく、余裕で座れる程空いていたのである。

故に痴漢に遭遇することなど自分には無縁のものかと思っていた。

が、現実には、今まででかなりの数の痴漢に遭遇する羽目になった。

今回はその憶えているだけの一部分のケースをご紹介しよう。

 

それは私が大学に通い始めて一ヶ月も経っていなかった頃だったと思う。

学校に向かう地下鉄に、私はいつもどおり乗り込んでいた。

人の混み方は…確か六部か七部くらいだったと思う。

そんなに満員御礼の、ぎゅうぎゅう詰め、という状態ではなかった。

私はいつもの様に扉に向かって、横にある鉄の棒を握って立っていた。

確か右側に椅子がある位置だったと思う。

この時点で勘のいい読者様はお分かりかと思うが、私の前側は扉を向いていたので、後ろ、詰まりお尻の方は全く無防備な状態だった。

その時の服装は確かチェックのスカートのスーツを着ていたと思う。上はセーラーの様な形で胸がちょっと開いており鎖骨が見えるタイプで、スカートはロングのフレアタイプだった。

生地はとても薄い綿で下手をすると下着のラインまでがまる見えになってしまいそうな服だった。

満員の電車に乗る時、ある程度人との接触は避けられないものである。

それは不可抗力であり、ごく自然な現象といえよう。

しかしその感覚はそのごく自然な不可抗力とは明らかに異なる感覚だった。

どう考えても、“そこ”に手、しかも“指”が一本ぴったり収まるのは不自然だった。

多分私の真後ろに立っていた男(だと思う)は、私のお尻に掌をぴったりとくっつけ、指を後ろから私の大事な部分に食い込ませ、上下に撫でこすってきた。

“どうしよう…”

それまで痴漢など遭ったことなどなかったから、正直焦った。

でも大声を上げる勇気など私にはなかったのである。

“そのうち、ドアが開けば、やめるわ、きっと…”

そう思って、取りあえず耐えていた。

幸い、スカートの上からの痴漢で、直接○○○○に触って中に入れてファックされている訳ではなかったから。

次の駅が来て、ドアが開いた。

これで離すしかないだろう。

私は胸の中でほっと安心していた。

だが、甘かった。

驚いた事に、私達のすぐ側でドアが開き、乗客が忙しなく出入りしているにも関わらず、手は相変わらず上下運動に専念したままだったのである。

“う、うそー”

結局U駅が来て私が降りるまで、その男はひと時も休まずに指を動かし続けていた。

全く大した度胸である。

…でも、スカートの上から触るだけ、の何処がそんなに気持ちいいのか、私は未だ理解に苦しむのだ。

 

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