風が吹いている。草原。二頭の馬。 先を行く見事な堂々とした黒鹿毛に跨っているのは、義嗣だ。 その後を、これまた見事な毛並の白馬が、ゆっくりと追う。鈴貴が乗っていた。 鈴貴が馬を操れると知った義嗣が、遠乗りに鈴貴を連れ出すのは初めてではない。 だが、今朝は、他に誰も伴う家来がない。義嗣と鈴貴は、この場にふたりきりであった。 手綱を手にしながら、鈴貴は前を行く義嗣の背を見つめている。細面に似合わず、逞しい筋肉がついた背だ。 そして、その背をじかに抱く感触を、鈴貴はもう知ってしまっている。 なぜ、こうなってしまったのか。 殺しても飽き足らぬはずだったこの男に、この数ヶ月、じょじょに心から篭め取られていった。そんな気がする。 「…見よ。鈴貴」 名を呼ばれた。鈴貴どの、と少し前までは呼ばれていた。一瞬そんなことを思い、それから、ゆっくりと義嗣が示した方角へ目を向ける。 「ここからの城の眺めが一番良い。どうじゃ、美しかろう」 馬を止めて、義嗣が言う。 小高い草原からは天守閣が一望できた。領内を流れる川。城下町。田畑の青。 初夏の陽光の中ですべてが鮮やかに映えている。 …あの城のどこかに、いま、馬士太郎もいる。 ふと、愛する息子のことを思った途端、鈴貴は自分の肌が変に熱いことに気付き、狼狽した。 昨夜の情事の名残をとどめている。途中からを、鈴貴は覚えていない。 「乱れたな」正気に戻った時、義嗣にからかうように言われ、鈴貴は少女のように背を震わせて泣いた。 馬士太郎の顔が、自分を睨んでいる。 そんな気がして鈴貴は、激しい羞恥に襲われた。 「…共廻りも連れず」 鈴貴は懸命に冷淡を装い、義嗣に言う。 「良いのでございますか」 義嗣はじっと鈴貴の顔を見た。笑う。 狐に似た顔だが、無知な者のそれではない。 「何を警戒せねばならぬ、そちか?」 「…」 「ふふ。いつもと違うな」 「…何が、でございますか」 「鞍に腰が座っておらん。儂の感触がまだ、そこに残っておるか」 鈴貴の頬が、さっと朱に染まった。 身体が熱い。もっと風が吹いて欲しい。 鈴貴は、そう願った。 夜の闇と静けさが、城内を覆っている。 鈴貴はふわり…と、薄桃色の襦袢の、帯を解いた。 解いた帯をそっと落として、そこで手を止める。 夜具にあぐらをかいて自分を見上げている義嗣の目を、しばらく見つめ返した。 夜伽を、もう四日続けて、命じられている。 「…どうした。脱がぬか」 義嗣が、促した。細面の、ともすれば狡猾に見える顔だ。 だが、この表情の奥に、底知れぬ何かがあることに気付いたのは、いつからだったか。 夫は逞しく爽やかな男だった。そして、それが全てだった。 鈴貴には夫がどういう時に何を考えているかが、良く見えた。 だが、この男は分からない。そこに惹かれてしまったのか。 夫は、目の前の男に比べて、何かが足らなかったから、敗れたのか。 「…灯を」 消して欲しい、と鈴貴は表情で訴えた。 簾の内部に、火の点った燭台がニ本、立っている。 三十畳におよぶ広い寝所だ。 奥十畳ほどが夜具の敷かれた褥の空間であり、天井から吊った簾で区切られている。 廊下に面した出入り口あたりには馬士太郎と同じ年齢ほどの小姓が座していたはずだ。 そちらの方が暗いから、簾の中の行為は外から伺えるだろう。 自分の姿が、簾越しとはいえ小姓に見られてしまう。 それがたまらなく羞ずかしかった。 義嗣は黙っている。 鈴貴の要求を意に介さない目に、絶対の自信が宿っている。 鈴貴はわずかに、諦めのため息を漏らすと、襦袢の前をゆっくりと開いていった。 その下には、もう何も付けてはいない。 (おぉぅ…) 今宵も義嗣の寝所番をしていた伊藤芳丸は、部屋の入り口に座したまま、寝所の奥に目を凝らす。 うっすらと明るい簾の内部の様子が、伺える。 こちらに背を向けていた女が、ふぁさ…と襦袢を夜具に落とし、一糸まとわぬ全裸を曝したところである。 肌が透き通るように白い。そして、柔らかそうな身体である。 腰のくびれ。豊かな丸い尻。その割れ目。芳丸の目は自然と釘付けになる。 乳房と股間を隠そうとしているのだろう。両手は身体の前に廻されている。 びくっ…と、不意に女の影が震える。 (義嗣さまが、何か申したな) すると、身体の前を覆っていた手を、女がゆっくりと身体の両脇に下ろしはじめた。 (…手を下ろし、すべてを曝すよう命じられたか) この光景を。 馬士太郎に見せてやれば…どうなるのか。 (…馬士太郎。どうじゃ) 先日、殴られた顎のあたりが、まだずきりと痛む。 (…そちの自慢の母は、すっかり、義嗣さまの虜になっておるわ。) 歪んだ笑いが、芳丸の頬に浮かぶ。 鈴貴は羞恥に染まった顔を斜め下に向け、唇をきつく噛んで、両腕を脇へ下ろした。 義嗣の目の前に全てを曝している。 背中まで垂れた豊かな黒髪。細く通った首筋。浮き出た鎖骨。 そして、形良く上を向いた左右の乳房。その先端の二つの突起。 くびれた腰のさらに下には、女のいのちである陰毛が薄く控え目に、茂っている。 鈴貴の裸体を、義嗣は愉し気に鑑賞する。すでに隅々まで征服した身体である。 義嗣の指と舌が触れていない場所はない。だが、何度見ても飽きない。 燭台の明かりが鈴貴の裸身のあちこちに、扇情的な陰影を作っている。 「…もう」 耐え切れぬように鈴貴が言った。見るのはやめて欲しい、と許しを求めている。 「…よし。来よ」 「あぁ…」 ようやく義嗣に許され、鈴貴はがっくりと夜具の上に膝を付く。 それから、のろのろとにじり寄り、義嗣に仕込まれた前戯のための姿態を取りはじめる。 義嗣に背を向け、そのあぐらの中に豊かな白い尻を預けて座るのだ。 (浅ましい…) 鈴貴は自分の姿を想像して羞じらう。 だが、身体の芯が熱くなる気がするのはなぜなのか。 義嗣の右手が、するりと鈴貴の脇の下から通され、右の乳房を包んだ。 「…ぁッ」 節くれだち、日焼けした逞しい手が、鈴貴の量感のある乳房を、ねっとりと揉みはじめる。 それだけで鈴貴は鼻からくぐもった息を漏らしてしまう。 身体をのけぞらせ、義嗣の厚い胸板に、己の背を押し付けてしまう。 義嗣の左手も、右手と同じように脇の下から通された。 むんず…と包み、鈴貴の白いふたつの乳房を、荒々しく揉みしだく。 「…あッ…あーッ」 鈴貴の背骨を、びりり…と電流が走り抜けていく。 「…鈴貴」 義嗣は鈴貴を乳責めにしながら、その耳元で囁きかける。 「どうじゃ?…やはり、儂の器量は、天下に届かぬか?」 「…んッ…」 辛そうに眉を寄せる鈴貴を見て、義嗣は、にやりと笑う。 初めて自分の前に引き出された日の鈴貴を思い出す。 自分を全く恐れぬ女になど、しばらく会わなかった。 この国のほぼ半分を手中に収めた今、誰もが皆、義嗣を畏怖している。 逆らえば殺される。重臣すら義嗣には意見ができない。 だからこそ、新鮮だった。 「器量が天下に足らぬ」と居並ぶ家臣達の前で痛罵された。 その女がどの程度のものか、試してみたかった。 身体を開かせるのに、数ヶ月かかった。それなりに、長かったのだろう。 (…だが) 義嗣の指が、乳房の頂上の突起を、こりっ…と摘んだ。 桃色の乳首は義嗣の愛撫に負けて、すでに固くしこっている。 「…ひッ!」 鈴貴が汗にぬめ光り始めた裸身を、海老のように反らせた。 (すぐに、身も心も雑賀の女にしてやるわ) 冷たい光を目に宿して、義嗣の指が、鈴貴の可憐な乳首を転がし、押しつぶし、蹂躙する。 「…!いッ……ッ」 「まだ早いぞ、鈴貴。そうたやすく乱れては、泰邦どのと馬士太郎に悪かろう」 「…あーーッ!…」 夫と息子の名を出され、鈴貴の総身がぶるぶると、震えた。 恨むように顔を反らせて、義嗣を仰ぎ見る。 「……ひ、ひどうございますっ」 その唇をあっという間に奪われる。義嗣の舌がぬるり、と口腔に侵入する。 「…ん…んんむッ…」 口を犯された鈴貴の目がみるみるうちに潤み、そして、ゆっくり閉じられていく。 (…義嗣さまは、よほどあの女に御執心のようじゃ…) 簾の中の様子を伺いつつ、伊藤芳丸は少し呆れながら、そう思う。 義嗣が四日も続けて同じ女を寝所に呼ぶなど、かつてなかったことだ。 (…まあ、あれだけの器量なら、続けて抱きたくもなるというものか…) それにしても、責めるものだ。芳丸はごくり、とまた唾を飲む。 いま、義嗣は、夜具の上に仰臥させた鈴貴の両脚を大きく開かせ、自分の両肩に担いでいた。 そして、鈴貴の上にのしかかりながら、己の剛直を、深く鋭く鈴貴の中心に埋め込んでいるようだ。 角度を付けて何度も何度も、その逞しい剛棒で鈴貴の蜜壷の壁を擦りあげ、中を抉りぬく動きを続けている。 鈴貴は義嗣の性技に翻弄され「…ひいーッ」「…あおうッ」と鋭い牝の鳴き声を上げ続けるばかりだ。 侍女に伴われ、寝所に入ってきた時の、慎ましく品のある風情を何度も見ているだけに、芳丸はいささか信じられない心地でその声を聞く。 夫を滅ぼした男に性の悦びを仕込まれ、身体の奥底から歓びの鳴き声を振り絞っている。 (…戦国の女は、魔性じゃ) 芳丸は、ふとそんなことを思う。 芳丸は、なおも簾の奥の様子を凝視し続けている。 義嗣が、鈴貴の脚を両肩から下ろし、そのまま鈴貴の上半身を抱き上げた。 今度は、繋がったまま、正面に向き合う形を取ろうというのだろう。 抱き起こした鈴貴の耳に何事か囁くと、鈴貴がいやいやというふうに首を振る。 何を言われたのか、ひときわ羞ずかしそうに頭を振るその姿は、甘えてさえいるように映る。 重ねて何事かを耳元に吹き込まれ、鈴貴は義嗣の首に白い両腕を絡みつかせ、義嗣の口に自ら吸い付いていった。 顔をぶつけるように口を淫らに舐めあい、唾液を混ぜ合う。 じゅる、じゅるっ…という淫らな音が、芳丸の所まで響いてくるようだ。 やがて唇を離した義嗣が、鈴貴の耳にまた何事かを吹き込む。 息を弾ませながら、鈴貴が、のろのろと義嗣の首に廻した腕をほどく。 そのまま、義嗣は夜具に仰向けに伏したようだ。 鈴貴は、まるで排泄をする時のような格好になり、義嗣に跨っている。 両手を義嗣の脇に付いて身体を支えながら、義嗣の剛直を己の性器で食い締め、両足を大きく開いて、踏ん張っているのだ。 義嗣が命じたらしく、やがて鈴貴は、荒い息遣いをこぼしながら、はしたなく、尻を上下に揺すり始めた。 「…ッ、あッ」 声が漏れる。仰向けになったまま動かない義嗣の上で、鈴貴の白い尻だけが揺れる。 豊かな乳房がぷるん、ぷるんと波打ち、尻のあわい目に、鈴貴の愛液に濡れそぼった義嗣の剛直が現れては消える。 もはや快楽の奴隷となっている鈴貴は、恍惚の表情をたたえながら夢中で豊満な尻を振りたくる。 己の蕩けきり、開ききった膣奥に、何度も何度も義嗣の剛棒を受け容れては吐き出し、また深深と受け容れる。 「はあッ…はあッ…あー…ッ…あッ、あッ、あッ」 いちばん感じる場所を自分で探り当てたのか。鈴貴の動きが激しく小刻みになった。 義嗣の腰に必死で尻を擦りつけ、円を描くように何度も何度もうねらせる。 芳丸は喉が渇くのを感じる。あまりに淫らで、そして美しい。淫蕩で壮絶な美しさ。 芳丸は鈴貴の痴態から、もはや目が離せない。 やがて、鈴貴が、もう耐えられぬというように、尻を振りながら啜り泣きはじめた。 ひっ…ひっ…と涙を流しながら、尻を振り続けている。 それが合図であったかのように、義嗣の両手が、下から鈴貴のふたつの乳房に伸びた。 荒々しく掴み取り、そして、節くれだった指で、鈴貴の形の良い乳房を、一気に、ぐにゃり、と握りつぶした。 「ひ、いい…ッ、ぃひいーーーーーッ…!」 瞬間、鈴貴はふいごのような叫び声をあげた。 海老のように背を反らせ、雷に打たれたように、びくびくっ…びくびくっ…と総身を痙攣させる。 ぶじゅっ…じゅっ…と何かの水音がした。 次の瞬間、鈴貴は、涎を垂れ流しながら義嗣の腹に崩れ落ち、白目を剥いて、悶絶した。 |
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