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(ちと、薬が効きすぎたか…)
伊藤芳丸は、そう思う。
呆然自失の態で、寝所の簾奥の空間を凝視している馬士太郎の表情を見れば、自分が仕組んだこととは言え、いささか憐憫の情が湧かぬでもない。

敬い、愛しつづけてきた母親が、父の敵の腕の中で悦楽の声を振り絞る姿を、見せ付けられたのだ。
なにも、自分より四歳も年下の馬士太郎を、ここまで追い詰める必要もなかったか。
しかし、その口の端には相変わらず卑劣な笑みが浮かんだままだ。

簾の奥は、いま、さきほどまでとは違って、静まり返っている。
夫の仇に絶頂を極めさせられた女は、いま、その仇の胸の中でどのような表情を見せているのか。
どのような放恣な姿態を曝け出しているのか。
その静けさが、逆に艶かしい。高みに押し上げられた女と、押し上げた男の、甘い囁きらしいものが、漂ってくるようだ。

鈴貴の口の中に、義嗣の指が深く埋まっていた。
鈴貴はうっとりと目を瞑り、義嗣の指に舌をからませ、ちゅく、ちゅく…と音を立てて舐め清めている。
今まで、自分の秘所をいたぶっていた指である。
鈴貴の頬も身体も、極めさせられた絶頂の余韻にうっすらと薔薇色に染まっている。
義嗣は背後から鈴貴を胸に抱きながら、鈴貴の足に自分の足をからめ、股を閉じることを許していない。
控え目に生えた陰毛に、玉のような露がきらきらと光っている。
鈴貴自身が紡いだ愛液の玉である。


義嗣は、満足そうに笑みを浮かべながら、鈴貴が舐める指を、戯れのように出し入れする。
鈴貴の頬の肉を内側からかきまわせば、端正な鈴貴の顔が、ぐにゃりとそのたびに歪む。
だが、鈴貴には抵抗のかけらもなく、うっとりと義嗣の蹂躙に身体を預けるのみである。
やがて、義嗣が、指を抜いた。
「…儂の名を、ようやく、呼んだのう」

言われて、閉じていた鈴貴の目が、うっすらと開いていく。
自信たっぷりの顔が目の前にある。
憎い。なぜ、この男はここまで、自信に溢れているのか。
夫を殺した男。息子を私から奪った男。
私を犯した男。…そして、すべてを奪った男。
「…いま一度、呼んでみよ」

命じられた。男の目が言っている。従え、と。
こんなふうに支配されことはこれまでの人生にない。
私は、強かった。強く生きてきたはずだ。
でも、もっともっと強い男が、この世界にはいた。
その男に支配されている。
そのことになぜか、胸が高鳴る。
鈴貴は、やがてまっすぐ義嗣の目を見詰めて、呼んだ。
「…義嗣さま」
「放っておかれて、淋しかったか」
義嗣が続けて聞く。鈴貴は、こくり、と頷いてみせた。
「…儂が、愛しゅうなったか?」
「…はい」
くっくっく…と義嗣が笑った。
この男はこれまでも、こうして何人もの女の心と身体を奪ってきたのだろう。
最初は卑しく見えた狐のような表情も、今の鈴貴には、思慮深く知的な男のそれに映ってしまっている。

「男児じゃ」
突然、そう言った。
笑っていた表情が、もう瞬時に変わって引き締まっている。
戦国の男の顔だった。鋭く見つめられ、鈴貴の胸は早鐘のように鳴る。
こういう義嗣の不思議さに、鈴貴は、じょじょに惹き付けられていったのだ。

義嗣は続けた。
「…儂の後を立派に継げる、元気な、男児が欲しい」
次に何を求められるかは、もう分かっている。
鈴貴の頭の中を、瞬時にさまざまな者の影が通り過ぎていった。
亡き夫、懐かしい家臣たち、自分に尽くしてきた侍女たち、故郷の父母、優しい兄…そして…

馬士太郎。
自分の命すら惜しくない、と愛し、育ててきた一人息子。
愛した夫との、結晶。
だが、目の前の男は、そんな鈴貴の逡巡など気にかけてはくれないだろう。
ただ従え、と命じるだろう。
奪いたいものを奪い、従えたいものを従えて生きてきた男。
もしかして、自分が心のどこかで探しつづけていた男なのではないのだろうか。
もう無理をしなくてもこの男は、きっと私の迷いも含めて、導いてくれる。

「鈴貴。もはや、否とは言わせぬ。我が側室となり、儂の子を産め」
言葉に、身体を貫かれた気がした。身体の芯が、かあっと熱くなった。
今、私は、また濡れている。鈴貴は自覚した。
「…はい」
鈴貴は、このときついに、「佐古鈴貴」であることを、捨てた。


「…ッ、あッ!あッ!あーーーッ…」
寝所に、誰の耳目も憚らぬような、女の嬌声が響いている。
馬士太郎の耳にも、それは、はっきりと届いていた。
もう一刻以上の間、母の牝の叫びが、馬士太郎を貫き続けているのだった。

いま、母は、あられもなく夜具の上で四つん這いになっている。
豊かな尻を、高く義嗣に向けて、捧げていた。
その姿は、簾の奥にうっすらとだが、見まがうことなく、映っている。

母の真っ白な裸身とくらべ、義嗣は陽に灼けて浅黒い。
引き締まった武士の肉体だ。
その手はいま、母の尻をがっしりと抱えこんでいる。
そして、母の尻に、己の腰を、飽きることなく何度も何度も、繰り返し、打ち込み続けている。
義嗣が、腰を引き、打ち込む。時折、不意をつくように激しく突く。
すると、母は狂ったように髪を振り乱して、泣き叫んだ。
「はァ…ッ!い、ひぃ――ッ…!ひいいーーッ…」

時折、ぱあんっ、と義嗣は母の尻を戯れのように打つ。
すると、このときも母は、びくびくと裸身を痙攣させ、「あおうッ…」と獣のような咆哮を漏らす。
それは、馬士太郎の想像などを遥かに超えた姿だった。
もはや、この寝所に詰めることは、馬士太郎にとって地獄以外の何者でもない。
その目は母親の狂態に釘付けになってはいるが、虚ろで、思考が停まっていることを感じさせた。
そうだ。心を閉じなければ、狂うかも知れない。


「鈴貴ッ…鳴けッ、もっと鳴けいッ!」
ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!…と義嗣の責めが激しくなる。
尻の肉を腰が打つ音が、寝所の中に高く響く。
「あーーーッ!…あッ、あっ、あああッ!!」
母がぐうん、と山猫のように背をのけぞらせた。
飛び散った汗が蝋燭の炎に触れたのか、ジュッ…という音がした。

「お、お情けを…、も、もぉッ…」
母の声に、泣き声が交じり始めている。
与えられる快楽に、耐え切れないのだろう。
頭を左右に打ち振り、腰を必死で揺すっている母の姿。
(…母は、こんなに哀れだったろうか)
馬士太郎は、ふと、そんな思いに囚われる。
これほど、母は、弱い女だったろうか。
「くくッ…儂の、子種が欲しいか、鈴貴ッ…」
義嗣の声が、勝ち誇っていた。
自分の思い通りにならぬものはない、そんな自信に満ちている。
「……ほ、欲しゅう、ございますっ…、す、鈴貴にっ…」
「孕ませて欲しいか、鈴貴ッ!」
「…!は、…孕ませて…くださりませっ…!」
母の声が、泣いていた。奪い尽くされた女の、諦めの交じった泣き声であった。
「ようし、孕めッ!鈴貴ッ!」
義嗣が、その瞬間、鋭く叫び、そして、ズン…と音がした。
えぐるように腰を突き入れたのだ。
義嗣はそのまま腰を引くことなく、さらに深く母の尻に逞しく勃起を続けていた男根をねじ込んだ。

ひゅううっ…と、ふいごのような音が一瞬、聞こえた。母が、叫ぶ為の空気を求めて喉を鳴らしたのだ。そして、
「あおおう…ッ…あおおおおおお…ッ…!!」
母が、屈服の絶叫を迸らせた。
母の胎内に今、義嗣の精液が、激しく飛沫をあげて、たっぷりと射込まれていた。


その晩、それから三度、馬士太郎は、母が犯され、義嗣の精を射込まれるのを見た。
明け方近くまで、義嗣は、疲れを知らぬように母を蹂躙した。
母の裸身は、汗にまみれ、淫らにぬめ光りながら、義嗣の激しい愛撫に応え、燃え上がらされた。

三度目のまぐわいでは、母が腰を使っていた。
真正面から義嗣と抱き合い、両足を大きく開いて、義嗣の掻くあぐらの上に白い尻を落し、その白く脂の乗った両肢が、義嗣の腰を抱え込むように挟んでいた。
もちろん、母の秘所は義嗣の逞しい男根で、埋め尽くされている。
いっぱいに深く貫かれながら、母は、牝犬のようにハッ、ハッ、という浅い息を吹きこぼし、懸命に腰を振る。
時折、耐え切れぬように義嗣の唇を自ら求める。
唇を激しく重ね、息が辛くなると、口を離す。
そして、また、腰を懸命に使い始めるのだ。
それは、もう何年も連れ添い、互いの性感を知り尽くした夫婦の夜の営みそのものだった。

最後には、母は錯乱に陥ったようだ。
腰を振っても振っても、義嗣は達してくれない。
自分はもう、さっきから何度も何度も軽い絶頂を迎えさせられているというのに。
鈴貴の性器は、もう真っ赤に充血し、腫れ上がっている。
しかし、義嗣が許すまでは、奉仕を続けなくてはならない。
そういう女になったのだ。
必死で義嗣の性器を、己の性器で包み込む。
締め付け、腰を上下に、左右に、振りたくる。
自分の頬を、涙が伝っていることにすら、鈴貴は気付いていない。
ヒッ、ヒッ…と泣き声を自分がこぼしていることも、分からない。
主人・義嗣は、冷たい目で、側室となった鈴貴の必死の奉仕を貪欲に受け容れているばかりである。
「…よ、義嗣…さま…っ」
涙と涎に顔をまみれさせて、鈴貴は哀願した。
「…鈴貴は…も、もう…く、狂うて、しまいます…っ」


「…ふんッ!」
鈴貴の限界の哀願に合わせた様に、いきなり義嗣がぐん、と強く腰を突き上げた。
「あ…がぅあッ…!」
清楚で慎ましかった母からはおよそ想像できぬ浅ましい叫びが、馬士太郎の耳に届いた。
突然、とどめの深いひと突きを送り込まれた母は、咆哮しながら、身体をブルブルッ…と何度も何度も痙攣させた。
次にその背筋が、ぴいんと、伸び、突っ張る。
弓なりに身体をのけぞらせ、絶息したかのように、固まった。
やがて、その全身から力が失われ、背中から、夜具に倒れこもうとする。
と、義嗣が、その背に手を廻し、腕一本で、悶絶していく母の腰をぐい、と支えた。
腰を支えられた母の両手だけが、どさりと夜具に垂れる。
長く美しい自慢の黒髪も、ばらばらっ…と夜具の上に散る。
義嗣の面前に、白く量感豊かな乳房が惜しげもなく曝された。

…そして、鈴貴の裸身を支える義嗣の腰が、びくん、びくん、と震えた。
今宵、三度目の射精であった。
悶絶した鈴貴の子宮に、義嗣は己の精液を時間をかけて、丹念に、流し込んでいく。
長年、自分に敵対し続けた戦国武将、佐古泰邦。
その正室であった鈴貴を側室とし、孕ませる。
鈴貴は、名門・寺石家の、娘である。
その事実が、今後の外交に、己の天下獲りに、どう働くか。どう、利用できるか。
義嗣の目は、そこまでを、見通している。
見下ろすと、己の男根が、鈴貴の膣を無惨に割り裂いて、深々と潜り込んでいた。
ふふ、と義嗣は愉快そうに、笑った。





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